【後編】音声合成ワークフローの構築 - 全カテゴリ対応

このモジュールの最後にワークフローJSONダウンロードがあります。

このモジュールで学ぶこと

• 複数のシート（canva_A〜E）を順番に処理するループ構造
• カテゴリに応じたフォルダ名の動的生成
• 処理完了後のステータス更新（GAS連携）
• ネストしたループ処理（シートループ → アイテムループ）

学習目標

このモジュールを終えると、以下のことができるようになります：

• Split In Batchesノードで複数シートを順次処理できる
• Codeノードでデータにカテゴリ情報を付与できる
• HTTP RequestノードでGASを呼び出してステータス更新できる
• 外側ループと内側ループのネスト構造を理解できる

目次

• セクション1: 全カテゴリ対応の設計
• セクション2: シートリストの生成
• セクション3: シートごとのループ処理
• セクション4: 処理対象の有無で分岐
• セクション5: フォルダ名の動的生成
• セクション6: Prepare Loop Dataの修正
• セクション7: ループの接続を完成
• セクション8: audio_statusの更新
• セクション9: 完成したワークフロー
• トラブルシューティング
• まとめ
• ワークフローJSONダウンロード
• よくある質問

事前準備

必要なもの

• Module 02（中編）完了済み
• 5つのシート（canva_A〜E）がスプレッドシートに存在
• audio_statusカラムがシートに追加済み

中編からの引き継ぎ

中編では単一カテゴリ（canva_A）のみを処理するワークフローを作成しました。後編では全カテゴリ（A〜E）に対応します。

セクション1: 全カテゴリ対応の設計

処理フローの変更点

中編までの構造（単一カテゴリ）:

Manual Trigger → Get canva_A → Filter → Set Folder Names → フォルダ検索 → Prepare Loop Data → Loop Over Items → 音声合成処理

後編の構造（全カテゴリ対応）:

Manual Trigger → Sheet List → Loop Sheets → Get Sheet Data → Filter NORMAL and Add Category
    → If Has Items
        → true: Set Folder Names → フォルダ検索 → Prepare Loop Data → Loop Over Items → 音声合成処理 → Loop Sheetsに戻る
        → false: Skip to Next Sheet → Loop Sheetsに戻る

ネストしたループ構造

セクション2: シートリストの生成

Step 1: Sheet Listノードを追加

5つのシート情報を生成するCodeノードを追加します。

1. Manual Triggerから「+」をクリック
2. 「Code」を検索して追加
3. ノード名を「Sheet List」に変更
4. 設定：

5. JavaScript:

// 5つのシートからデータを取得するためのシート情報
const sheets = [
  { name: 'canva_A', category: 'A', gid: 1459009746 },
  { name: 'canva_B', category: 'B', gid: 1989446321 },
  { name: 'canva_C', category: 'C', gid: 10904001 },
  { name: 'canva_D', category: 'D', gid: 920483375 },
  { name: 'canva_E', category: 'E', gid: 1645982552 }
];

// シート情報を出力（後続のノードで使用）
return sheets.map(s => ({ json: s }));

注意: gidは自分のスプレッドシートの値に変更してください。各シートのgidはURLのgid=以降の数値です。

テンプレートJSONを使用する場合: このコードは既にテンプレートに含まれています。gidの値のみ自分のスプレッドシートに合わせて変更してください。

Sheet Listの設定画面と実行結果:

5件のシート情報が出力されればOKです。

チェックポイント

• Sheet Listで5件のシート情報が出力された
• 各アイテムにname, category, gidが含まれている

セクション3: シートごとのループ処理

Step 2: Loop Sheetsノードを追加

シートを1つずつ順番に処理するループを作成します。

1. Sheet Listから「+」をクリック
2. 「Split In Batches」を検索して追加
3. ノード名を「Loop Sheets」に変更
4. 設定：

Step 3: Get Sheet Dataノードを追加

現在のシートからデータを取得します。

1. Loop Sheetsの「loop」出力から「+」をクリック
2. 「Google Sheets」を検索して追加
3. ノード名を「Get Sheet Data」に変更
4. 設定：

ポイント: Sheet IDにExpressionを使うことで、Loop Sheetsから渡されるgid値に基づいて動的にシートを選択します。

Step 4: Filter NORMAL and Add Categoryノードを追加

audio_status=NORMALの行をフィルタし、カテゴリ情報を付与します。

1. Get Sheet Dataから「+」をクリック
2. 「Code」を検索して追加
3. ノード名を「Filter NORMAL and Add Category」に変更
4. 設定：

5. JavaScript:

// 現在のシート情報を取得
const sheetInfo = $('Loop Sheets').first().json;
const category = sheetInfo.category;

// シートデータを取得してcategoryを付与
const items = $input.all();

// audio_status === 'NORMAL' でフィルタしつつcategoryを付与
const filtered = items.filter(item => {
  const status = item.json.audio_status;
  return status === 'NORMAL';
});

return filtered.map(item => ({
  json: {
    ...item.json,
    category: category
  }
}));

Filter NORMAL and Add Categoryの設定画面と実行結果:

チェックポイント

• Loop Sheetsで5回ループが実行される
• Filter NORMAL and Add Categoryでcategoryカラムが付与される
• audio_status=NORMALの行のみがフィルタされる

セクション4: 処理対象の有無で分岐

Step 5: If Has Itemsノードを追加

フィルタ結果が0件の場合はスキップします。

1. Filter NORMAL and Add Categoryから「+」をクリック
2. 「If」を検索して追加
3. ノード名を「If Has Items」に変更
4. 設定：

5. Options > Convert types where required: ON

If Has Itemsの設定画面と実行結果:

Step 6: Skip to Next Sheetノードを追加

処理対象がない場合に次のシートへスキップします。

1. If Has Itemsの「false」出力から「+」をクリック
2. 「Code」を検索して追加
3. ノード名を「Skip to Next Sheet」に変更
4. JavaScript:

// このノードはLoop Sheetsに戻すためのダミー
// If Has Itemsのfalseブランチから来た場合に使用
return [{ json: { continue: true } }];

5. Skip to Next Sheetの出力をLoop Sheetsの入力に接続

Skip to Next Sheetの設定画面:

チェックポイント

• If Has Itemsでtrueとfalseに分岐する
• 処理対象が0件のシートはfalseブランチでスキップされる
• Skip to Next SheetからLoop Sheetsに戻る接続がある

セクション5: フォルダ名の動的生成

Step 7: Set Folder Namesノードを修正

カテゴリに応じてフォルダ名を動的に生成します。

1. If Has Itemsの「true」出力から「+」をクリック
2. 「Code」を検索して追加
3. ノード名を「Set Folder Names」に変更
4. JavaScript:

// フィルタ済みデータを取得
const items = $('Filter NORMAL and Add Category').all();

if (items.length === 0) {
  return [];
}

// 最初のアイテムからcategoryを取得
const category = items[0].json.category;

// 年月を生成
const now = new Date();
const yearMonth = now.getFullYear().toString() + String(now.getMonth() + 1).padStart(2, '0');

// フォルダ名を生成（1件だけ返す - フォルダ検索用）
const folderName = `${yearMonth}Instagram投稿${category}`;
const archiveFolderName = `${yearMonth}Instagram投稿${category}_archive`;

return [{
  json: {
    folder_name: folderName,
    archive_folder_name: archiveFolderName,
    category: category
  }
}];

Set Folder Namesの設定画面と実行結果:

ポイント: categoryが「E」の場合、folder_nameは「202512Instagram投稿E」になります。

チェックポイント

• Set Folder Namesでカテゴリに応じたフォルダ名が生成される
• folder_nameとarchive_folder_nameが正しい形式で出力される

セクション6: Prepare Loop Dataの修正

Step 8: Prepare Loop Dataノードを修正

archive_folder_idも取得するように修正します。

1. If Archive Existsの後にあるPrepare Loop Dataを開く
2. JavaScriptを以下に変更:

// Filter NORMAL and Add Categoryから元データを取得
const originalItems = $('Filter NORMAL and Add Category').all();
// Set Folder Namesからフォルダ名を取得
const folderNames = $('Set Folder Names').first().json;
// Search Category Folderから正確な名前でフィルタ
const categoryFolder = $('Search Category Folder').all()
  .find(item => item.json.name === folderNames.folder_name);
const categoryFolderId = categoryFolder ? categoryFolder.json.id : null;

// Search Archive Folderからアーカイブフォルダを取得（作成された場合も考慮）
let archiveFolderId = null;
const archiveFolders = $('Search Archive Folder').all();
const archiveFolder = archiveFolders.find(item => item.json.name === folderNames.archive_folder_name);
if (archiveFolder) {
  archiveFolderId = archiveFolder.json.id;
} else {
  // Create Archive Folderから取得を試みる
  try {
    const created = $('Create Archive Folder').first();
    if (created && created.json.id) {
      archiveFolderId = created.json.id;
    }
  } catch (e) {
    // 作成されていない場合は無視
  }
}

return originalItems.map(item => ({
  json: {
    ...item.json,
    folder_name: folderNames.folder_name,
    archive_folder_name: folderNames.archive_folder_name,
    category_folder_id: categoryFolderId,
    archive_folder_id: archiveFolderId
  }
}));

Prepare Loop Dataの設定画面と実行結果:

注意: フォルダが存在しない場合、category_folder_idはnullになります。これは正常な動作で、該当するカテゴリの処理はスキップされます。

チェックポイント

• Prepare Loop Dataで各アイテムにcategory_folder_idとarchive_folder_idが付与される
• フォルダが存在する場合はIDが設定される
• フォルダが存在しない場合はnullが設定される

セクション7: ループの接続を完成

Step 9: Loop Over Itemsの「done」出力を接続

内側ループ（アイテムループ）が完了したら、外側ループ（シートループ）に戻ります。

1. Loop Over Itemsの「done」出力をLoop Sheetsの入力に接続

Loop Over Itemsの完了後の流れ:

チェックポイント

• Loop Over Itemsの「done」出力がLoop Sheetsに接続されている
• アイテムループ完了後、次のシートの処理に進む

セクション8: audio_statusの更新

Step 10: Update audio_statusノードを追加

処理完了後、audio_statusを「DONE」に更新します。

1. Upload New Videoから「+」をクリック
2. 「HTTP Request」を検索して追加
3. ノード名を「Update audio_status」に変更
4. 設定：

5. Send Body: ON
6. Body Content Type: JSON
7. Specify Body: Using JSON
8. JSON:

{
  "action": "updateAudioStatus",
  "postId": "{{ $('Loop Over Items').item.json.post_id }}",
  "category": "{{ $('Loop Over Items').item.json.category }}",
  "status": "DONE"
}

注意: URLは自分のGASデプロイURLに変更してください。

Update audio_statusの設定画面と実行結果:

Step 11: Update audio_statusからLoop Over Itemsに接続

ステータス更新後、次のアイテムの処理に進みます。

1. Update audio_statusの出力をLoop Over Itemsの入力に接続

チェックポイント

• Update audio_statusでGASが呼び出される
• レスポンスでsuccess: trueが返される
• Update audio_statusの出力がLoop Over Itemsに接続されている

セクション9: 完成したワークフロー

すべてのノードが接続され、ワークフローが完成しました:

ワークフローの処理フロー

1. Sheet List: 5つのシート情報を生成
2. Loop Sheets: シートごとにループ
   2-1. Get Sheet Data: シートからデータ取得
   2-2. Filter NORMAL and Add Category: フィルタ＆カテゴリ付与
   2-3. If Has Items: 処理対象の有無で分岐
        → false: Skip to Next Sheet → Loop Sheetsに戻る
        → true: 以下を実行
   2-4. Set Folder Names: フォルダ名を動的生成
   2-5. Search Category Folder / Search Archive Folder: フォルダ検索
   2-6. If Archive Exists: アーカイブフォルダがなければ作成
   2-7. Prepare Loop Data: 全アイテムにフォルダIDを付与
   2-8. Loop Over Items: 各アイテムをループ
        → Search Video File → If Video Exists
        → true: 音声合成処理 → Update audio_status → Loop Over Itemsに戻る
        → false: Loop Over Itemsに戻る
   2-9. Loop Over Items完了 → Loop Sheetsに戻る
3. Loop Sheets完了 → 終了

チェックポイント

• 全カテゴリ（A〜E）が順番に処理される
• フォルダが存在するカテゴリのみ音声合成が実行される
• 処理完了後、audio_statusがDONEに更新される

トラブルシューティング

Loop Sheetsで「$.item is only available in Run Once for Each Item mode」エラー

症状: Filter NORMAL and Add CategoryでLoop Sheetsの参照エラー

原因: Codeノードで$('Loop Sheets').item.jsonを使用している

解決方法: .itemを.first()に変更

// 修正前
const sheetInfo = $('Loop Sheets').item.json;

// 修正後
const sheetInfo = $('Loop Sheets').first().json;

category_folder_idがnullになる

症状: Prepare Loop Dataの出力でcategory_folder_idがnull

原因: Google Driveにそのカテゴリのフォルダが存在しない

解決方法: これは正常な動作です。フォルダが存在しないカテゴリは、If Video Existsでfalseブランチに流れてスキップされます。

Update audio_statusでエラーが発生する

症状: GAS呼び出しでエラーが返される

原因: GASのupdateAudioStatus関数が存在しない、またはデプロイURLが間違っている

解決方法:

1. GASにupdateAudioStatus関数が存在するか確認
2. GASが最新版でデプロイされているか確認
3. デプロイURLが正しいか確認

まとめ

このモジュールで学んだこと

• Split In Batchesノードを使った複数シートの順次処理
• Codeノードでの動的なカテゴリ情報の付与
• ネストしたループ構造（外側: シート、内側: アイテム）
• 処理対象の有無による条件分岐
• HTTP RequestノードによるGAS連携でのステータス更新

完成した音声合成システム

[Canva用シート振り分け]
  posts → canva_A〜E（audio_status: NORMAL）
      ↓
[音声合成ワークフロー]
  全カテゴリを順次処理
  → 動画ダウンロード
  → Fish Audio API（前半・後半）
  → ffmpeg合成
  → 元動画をアーカイブ
  → 新動画をアップロード
  → audio_status: DONE
      ↓
[既存: Instagram投稿ワークフロー]
  audio_status=DONEの動画を投稿

次のステップ

• Canva用シート振り分けワークフローにaudio_status: NORMALを追加
• Instagram投稿ワークフローでaudio_status=DONEの動画のみを対象にする

ワークフローJSONダウンロード

以下のJSONファイルをダウンロードしてn8nにインポートできます。

audio-workflow-advanced.json

インポート後に変更が必要な箇所:

また、Google Sheets、Google Drive、Fish Audio APIのクレデンシャルを設定してください。

参考資料

• n8n Split In Batches Node
• n8n Code Node
• n8n If Node
• Google Apps Script Web Apps

よくある質問

Q: なぜ外側と内側でループを分けるのですか？ A: カテゴリごとにフォルダ検索を1回だけ実行するためです。フォルダ検索をアイテムごとに実行すると、同じ検索を何度も繰り返すことになり非効率です。

Q: フォルダが存在しないカテゴリはどうなりますか？ A: category_folder_idがnullになり、Search Video Fileで動画が見つからないため、If Video Existsのfalseブランチでスキップされます。エラーにはなりません。

Q: audio_statusがNORMAL以外の行はどうなりますか？ A: Filter NORMAL and Add Categoryでフィルタされ、処理対象から除外されます。既にDONEの行や、空の行は処理されません。

Q: GASを使わずにGoogle Sheetsノードでステータス更新できませんか？ A: Google Sheetsノードでは動的にシートを選択して更新することが難しいため、GASを使用しています。GASならcategoryパラメータに基づいて適切なシートを更新できます。

Q: 処理中にエラーが発生した場合、途中から再開できますか？ A: audio_status=NORMALの行のみが処理対象なので、エラー発生後に再実行すれば、未処理の行のみが処理されます。既にDONEの行は再処理されません。